日々の会計記帳、決算書の作成から経営相談まで、企業にとってなくてはならない存在である税理士、経営におけるブレインとも言える顧問税理士を選ぶ際は、慎重に決断をしたいものです。他方で、顧問税理士の変更時に変更理由を伺うと著しくミスマッチが生じていることもしばしばあります。
そこで、顧問税理士を選ぶ際に弊社が基本的なルールとしてお客様にお伝えしている重要ポイント5つ、付加価値要素3つをまとめています。これらの点を意識しながら、複数の税理士との面談に挑んでみてください。
顧問税理士の変更や新しい税理士探しの参考になれば幸いです。
顧問税理士を選定する際に、必ずチェックすべき重要ポイント5つ!
1.品質:質問への回答が素人でも理解できるレベルか?ケアレスミスが無いか?
税務に明るくない方からすれば、質問に対して専門用語で返答されてしまうと疑問は募るばかり。
- 簡単な言葉に言い換える
- 例示を用いて分かり易く説明する
等といったように、言葉を尽くしてくれる税理士が理想的。
何気ない質問に対して分かりやすく答えてもらえるかを意識して初回面談に挑んでみましょう。
また、ケアレスミスが無いかどうかも注目したいポイント。
- 単純な数字の転記を間違えている
- “今週中に返答する”と言ったのに連絡がない
等、小さなミスでも、税務のミスは長年引き継がれ、いつしか大きな歪みになってしまいます。
長くお付き合いする相手としては、ケアレスミスの少ない税理士を選びたいものですね。
2.IT対応:最新の会計ソフト・オンラインコミュニケーションに抵抗が無いか?
昨今では当たり前になりつつあるオンラインコミュニケーション。企業内のデジタル化を進めていく中で、経理事務の領域は顧問税理士のアドバイスが必要になることも少なくありません。顧問税理士の対応だけが「FAX、電話対応」という様に時代遅れなのは考え物。もちろんFAXや電話対応を否定するわけではありませんが、柔軟に対応してくれるかどうかは気にしてみたいところです。
- 最新の会計給与ソフト導入
- 経理事務に係るバックオフィス業務の設計、会計給与システムの運用支援
- クラウドストレージでデータを共有
- slackやchatwork等のチャットを活用
- 電子サインで書き損じや郵送の手間を削減
等に加えて、企業に必要なソフトウェアをご紹介できる、相談にも乗れる、という税理士であれば文句無し。
3.関与:明確なサイクルでサポートを受けれるか?(例 毎月1回45分MTG)
毎月顧問料を払っているのに何カ月も音沙汰がないというのは不親切。契約時は魅力的なサービスを言ってくれていたのにいざ契約すると「顧問税理士に何をしてもらっているか分からない」ということはありませんか?
特に経営アドバイス等は、必要性が生じた際にできるだけ早く教えてもらいたいもの。経営者の思いを数字に照らして説明してもらえる存在が顧問税理士です。
- 毎月一回、隔月一回のミーティング
- 税務上の問題が無いかの確認、経営上の助言
等に加えて、チャット機能を利用した密な意思疎通が行われるかも重要なポイントです。
4.スピード感:業務進行上に支障が生じないレベルの早さで返答があるか?
税理士に質問をして以来、なかなか返答がこない…。というお悩みをよく耳にします。常時即レス、とまではいかなくとも、業務に支障が生じないレベルでのレスポンスは求めたいところ。
- その場で返答できる範囲の返答をしてくれる
- 取り込み中で返信できない場合は、いつ頃までに返答がもらえるかの連絡がくる
- 調査中であれば、その旨の連絡がある 等
といった税理士なら業務を進めやすいですね。
その時々で進めている業務が変わるため、遅れて返信がきても「あれ、何を聞きたいんだっけ」と思うこともあるのではないでしょうか。特に経営者は日々思考を巡らせているため、返答の早い税理士を選ぶことで思考のブラッシュアップや、更なる業務効率化にもつながります。
5.明朗価格:上記1〜4を踏まえて、自身が納得できる価格(見積)を掲載しているか?明確な料金表に基づき、年間の料金見積もりの提示があるか?
顧問契約の内容に納得できることに加えて、「年間の業務量」と「料金」が事前に分かれば安心です。
毎月の顧問料と決算申告時のみ料金がかかると思いきや、年末調整時や税務調査対応時に思いもよらない請求があることも。
- 業務やサービス内容ごとの料金表がある
- 料金表を契約の際に添付してくれる
- 一年の顧問業務とその他付随する業務の目途を事前に提示できる
等というように、料金表があるのはもちろんのこと、将来発生する料金もできる限り早く開示してくれる税理士が理想的。
また、企業様の事業規模の変化に伴う顧問料等の調整が、明瞭に提示されるかも確認したいポイントです。
5つのポイントまとめ:
いかがでしょうか。とても基本的なことのみを列挙しましたが、いずれも弊社に顧問を変更された企業様の大半が、上記のポイントを欠いている税理士を顧問にしていた経緯がありました。
規模の大きい税理士事務所や専門分野に強い税理士に任せて安心したくなる気持ちは分かりますが、まずは、基本的なポイントをおさえている税理士を最低限選んでおきましょう。
付加価値としてチェックしたいポイント3つ
上記の5つを満たした上で、更に付け加えるとすれば下記の3つが挙がります。
1.人柄:相談しやすい方が担当か?初歩的な内容もためらわずに質問できるか?
上記5つの条件を揃える税理士だとしても、話にくい相手ならベストの選択とは言えません。税理士事務所とはいえ、実際の窓口となる担当者は補助者が担当することもしばしばあります。
税理士は家族に次いで事業主様に近い存在と言っても過言ではありませんから、些細なことでも気軽に聞くことができる相性の良い人を選びましょう。
2.特異な専門性:必要とする特定領域(例:資金調達)に関する専門性が高いか?
エクイティでの資金調達、海外支援、事業承継等の専門性の強みも税理士によって全く異なります。
例えば、スタートアップを目指す若い起業家様は税理士の選択が重要。
投資家の投資を募り、IPOやM&Aを出口に急成長を目指す起業に際して、特に地方ではスタートアップに関わることのできる税理士は少ないため、場合によっては一般創業と区別なく対応されることもあります。
税理士選びの際には、税理士個人や税理士事務所ごとの専門性を比較してみて下さい。
3.代行範囲:自社リソースを補填するサポート(例:記帳代行)もあるか?
税理士によっては「記帳代行は全くしません」という場合もあります。
記帳代行、振込みの代行、給与計算等をどこまで代行してくれるのかも確認しましょう。事業のアクセルを踏んでいくうえでアウトソース可能かどうかは最初に確認しておいてもいいところです。
さいごに
「紹介だから」「大手で安心だから」という理由で税理士を選ぶ方が多いですが、税理士事務所を3社以上は絶対に比較してほしいと考えています。
税理士と経営者は長いお付き合いになるため、税理士を選ぶことは結婚相手を選ぶようなもの。
何に重点を置くかを事前に決め、必ず税理士に会って話をし、業務内容に基づいた見積もりを取りましょう。
皆様が理想の顧問税理士に出会えることを願っています。